敷金なしの退去費用は高いのか。4件の実額を並べてわかった、決め手は「特約」

敷金0円の部屋で書面上確定した退去費用66,550円を示したアイキャッチ画像 部屋を借りる

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【結論】同じエリアで比べると、敷金なしの部屋の退去費用は高めでした。ただし差は約1万円。 そして敷金ありの物件でも5.5〜5.8万円は取られます。 金額を決めているのは敷金の有無そのものではなく、契約ごとの「特約」です。

【根拠】 私は今回の部屋探しで、4件ぶんの退去時の取り決めを手元に持っています。実際に住んだ部屋と、最後まで比較した候補です。契約した品川の1K(敷金0円)は退去時の負担が66,550円で確定しています。

【この記事で分かること】

  • 4件の実額と、そこから分かる「相場を調べても意味がない」理由
  • 退去前の大掃除が無駄になる理由
  • 入居時の現金を抑えたくて敷金なしを選ぶ場合に、いつ・いくら必要になるか
  • 入居初日にやらないと、あとで数万円を請求されかねないこと

敷金ゼロって得に見えるけど、退去のときにまとめて取られるんじゃないの?

取られるよ。ただ金額は契約前にちゃんと説明されるもんで、隠されとるわけじゃない。僕も同じことを疑っとったで、手元の4件を並べてみたよ

私が契約した物件の条件

まず、どういう物件の話なのかを先に出します。

項目 内容
場所・広さ 東京都品川区・1K・20.06㎡
家賃 115,000円+管理費15,000円=月13.0万円
敷金 0円
礼金 0円
契約日 2026年7月31日
退去時の負担 66,550円(契約書面で確定)

敷金0円・礼金0円の物件です。 入口が軽い代わりに、どこかで回収されているはず——そう思って契約書を読みました。

退去時に必ず取られる66,550円の内訳

契約書に添付されていた「原状回復に関する負担要項」に、金額が明記されていました。

項目 金額
ハウスクリーニング 53,350円
エアコン洗浄(壁付1台) 13,200円
合計 66,550円

この金額は、部屋の使い方と関係ありません。

要項には、ハウスクリーニング費用は清掃状況にかかわらず借主負担と書かれています。つまり、退去前に何時間かけて掃除をしても、1円も減りません。

えっ。じゃあ退去前の大掃除って、意味ないの?

クリーニング代を減らす目的なら意味がない。掃除して減るのは「傷や汚れを見落とさない」分だけかな。

これは知らないと損をする話ではなく、知っていると時間を損しない話です。

原状回復費用負担基準の通常清掃の行。経過年数は考慮せず、使用状況や清掃状況に係らず行うと記載
契約書に付いていた原状回復費用の負担基準です。通常清掃の欄に「経過年数は考慮せず、賃借人または入居者の使用状況や清掃状況に係らず行う」と書かれています。

手元にある4件の書類を、並べてみました

どれも、私が自分で関わった部屋です。 実際に住んでいた部屋、これから住む部屋、そして契約の直前まで比較した候補。すべて手元に届いた書類に書かれていた金額で、ネットで集めた相場データではありません。

物件名は伏せます。 住んでいる場所の特定を避けるためで、金額は書類のとおりです。

部屋 敷金/礼金 クリーニング エアコン洗浄 退去時の負担 広さ
名古屋で住んでいた部屋 敷0・礼0 33,000円 11,000円 44,000円 25.2㎡
候補A(築2014・2階) 敷1・礼1 44,000円 14,300円 約58,300円 21.66㎡
候補B(築2022・最上階) 敷1・礼0 38,500円 16,500円 約55,000円 20.77㎡
品川の部屋(今回契約) 敷0・礼0 53,350円 13,200円 66,550円 20.06㎡

敷金ありの物件でも、5.5〜5.8万円が取られます。

で、結局「敷金なしは退去費用が高い」の?高くないの?

僕も最初そこが知りたかった。ふんで並べてみたら、答えは一言では言えんかった。

この表の読み方を、順番に書きます。

まず、意味があるのは「同じエリア内」の比較です。 部屋を探すとき、地域をまたいで比べることはないからです。

同じ品川エリアの3件では、敷金なしの私の部屋がいちばん高い(66,550円)。ただし差は約1万円で、3件だけの話です。

「敷金なしは退去費用が高くなりやすい」とよく言われます。理屈はこうです——敷金という担保がない分、貸主は取りはぐれを避けるために、退去費用を特約であらかじめ確定させておく。 実際、私の契約もまさに金額まで明記された特約型でした。

ただし、この「傾向」を裏付ける統計は、調べた範囲では見つかりませんでした。 ネットで見かける「平均◯万円」も、出所が書かれていないものがほとんどです。

「敷金なしだから高い」と決めつける根拠も、「変わらない」と言い切る根拠も、実はどこにもありません。あるのは、あなたの契約書の特約だけです。

名古屋の部屋を並べたのは、敷金の比較のためではありません。 地域や物件が変われば、金額の水準そのものが動く——その証拠です。実際、一番広い部屋(25.2㎡)が一番安く、一番狭い部屋(20.06㎡)が一番高い。 広さでも築年数でも決まらず、物件ごと、管理会社ごとに決められている金額だということです。

だから「敷金なしの退去費用の相場はいくらか」を検索しても、自分の物件の答えは出ません。 調べるべきは相場ではなく、その物件の要項に何と書いてあるかでした。

※参考までに、20㎡前後のハウスクリーニング代を調べた範囲では2.5〜4万円ほどでした。私の契約した53,350円は、そこから見ると高いほうです。 ただしこれは私が調べた範囲の話で、地域や管理会社で変わります。

なぜ取られるのか。「特約」だからです

ひとつ、公平のために書いておきます。国土交通省の「原状回復ガイドライン」では、普通に暮らしてできる汚れ(通常損耗)の回復は、本来は貸主負担が原則です。

それでも借主がクリーニング代を払うのは、契約に「特約」が付いているからです。負担の範囲と金額が明記され、借主が合意していれば、この特約は有効とされています。私の契約書も、金額まで明記されたこの型でした。

つまり、この記事の4件は「クリーニング特約のある物件」の話です。 特約のない物件なら、退去時の負担はもっと軽くなりえます。契約書に特約があるか、金額が書いてあるか——見るべき場所はそこです。

特約つながりで、もうひとつ。「短期解約違約金」も確認してください。これは敷金のあるなしに関係なく付いています。 私の契約(敷金なし)は1年未満の解約で賃料1か月分。比較していた敷金ありの候補2件も、同じ「1年未満で1か月」でした。急な転勤や引越しの可能性がある方は、退去費用とあわせてここも見ておく項目です。

この金額は、契約前に分かります

退去時の負担は、契約前に必ず説明されます(重要事項説明の法定項目です)。それだけでなく、書面でももらえます。 私の場合も、申込段階の書類に退去時費用の金額まで載っていました。隠されているわけではありません。

だから、やることはひとつです。候補を比べている段階で「退去時にいくらかかりますか」と聞いて、比較表に1列足してください。 聞けば教えてもらえるものを、家賃と初期費用だけで比べてしまうのがもったいない——それがこの記事で言いたいことです。

2年で退去しても、4年で退去しても。「敷金なしの損」は礼金の分だけ

敷金は預け金です。返ってくることが前提のお金で、支払いではありません。

だから同じ物件で「敷金1か月・礼金1か月」の条件だったとしても、退去時に敷金から66,550円が引かれて、残りが返ってくるだけです。支払う総額は変わりません。

敷金0・礼金0(私の契約) 敷金1・礼金1の場合
入居時に払う 少ない 敷金+礼金の2か月分が上乗せ
退去時に払う 66,550円を現金で払う 預けた敷金から差し引かれる
実質の差 礼金の1か月分(約13万円)だけ損

つまり実質的な差は「礼金」の部分です。 敷金の有無ではありません。

そしてこの差は、住んだ期間に関係なく発生します。 2年で退去しても、4年で退去しても、礼金は返ってきません。

じゃあ敷金ゼロ物件を選んだ方がいいってこと?

そこは人によるもんで僕には決めれん。ただ判断に使える数字なら出せるよ。

入居時にまとまった現金を用意しにくいなら、敷金0円は合理的です。 一方で、退去時に66,550円を別途用意する必要があることは覚えておく必要があります。敷金があれば、そこから引かれて終わりでした。

どちらが正しいかは、その人がいつお金を用意できるかで変わります。 決められるのは、金額を出すことだけです。

今のお金が足りなくて、敷金なしを選ぶ方へ

ここまでは「損か得か」の話でした。ただ、敷金・礼金を用意できないから敷金なしを選ぶという方も多いと思います。

その判断は間違っていません。 入居時に出ていく現金が少ないことには、それ自体に価値があります。私も同じでした。

ただ、ひとつだけ覚えておいてください。

数年後、退去のときに現金でこの金額を払う日が来ます。

敷金のある物件なら、預けたお金から引かれて、残りが返ってくるだけでした。手出しはありません。 敷金なしは、その分を退去時に現金で払う契約です。

そして退去のときは、次の部屋の初期費用と引越し代が同時に出ていきます。 そこにこの金額が乗る。

金額は契約書に書いてあります。とはいえ、メモしても数年後には忘れます。私も、名古屋の部屋の退去費用がいくらだったか、今回書類を読み返すまで覚えていませんでした。

だから、覚えておくことはひとつだけでいいと思います。「退去費用は、契約書に書いてある」。 次の引越しを決めた日に、まず契約書を開いてください。

本当に高くつくのは、クリーニングではありません

要項を読んで一番驚いたのは、傷の負担ルールが部位によってまったく違うことでした。

部位 経過年数の考慮 負担の考え方
クロス(壁紙)・畳床・カーペット・クッションフロア あり(6年で残存価値1円) 長く住むほど負担が減る
フローリング・建具・窓枠・網戸・ガラス・鍵 なし 何年住んでも、交換費用の全額を負担

床の傷は、負担が減りません。

原状回復費用負担基準の表。フローリングの補修は経過年数を考慮しない、クロス等は6年で残存価値1円と記載
私の契約書に付いていた原状回復費用の負担基準です。上のフローリングは「補修は経過年数を考慮しない」、下のクロス等は「6年で残存価値1円となるような負担割合を算定する」。同じ表のなかで扱いが違います。

壁紙は6年住めば価値がほぼゼロになるので、多少の汚れなら負担は小さい。ところが私の要項では、床は経過年数を考慮しないと明記されています。 4年住んでも、入居翌日と同じ扱いです。

経過年数と賃借人負担割合のグラフ。6年で負担割合が0%になる直線
同じ書類にあった図です。クロスなど「経過年数を考慮する」ものは、6年で負担割合が0%まで下がります。床にはこの線が適用されません。

これは私の物件だけの話ではありません。国交省のガイドラインでも、フローリングの部分補修は経過年数を考慮しない扱いです(全面張り替えになる場合は、建物の経過年数で減額されます)。補修費を調べた範囲では、部分補修で1か所5千〜2万円、1畳ぶんの張り替えで1.5万〜3万円ほどが目安のようでした。壁紙の汚れと違って、床の傷は年数で守られません。

だから引越し当日にいちばん気をつけるべきは、床です。 私は搬入時の床養生を業者に必ず依頼することにしました。

引越し業者から見積もりを取るときは、養生の範囲を必ず聞いてください。 「養生あり」と言っても、玄関から部屋まで全部敷くのか、通り道だけなのかで違います。床に1本傷が付けば、養生の有無で数万円変わります。

入居初日にやらないと、あとで払わされるもの

要項に、こういう一文があります。

明渡し立会い時に、現況確認書にない損耗や不具合がある場合には入居後に発生したものと判断させて頂きます

現況確認書=退去時にもめないための唯一の証拠です。

ここに書かれていない傷は、全部こちらが付けたものとして扱われます。 もともと付いていた床の傷も、書き漏らせば自分の負担になります。

家具を入れる前に書いてください

これが最大のポイントです。荷物を運び込んだあとでは、床も壁も見えません。

私は鍵の受け取り日と搬入日を10日空けました。空室の状態で、明るいうちに1部屋ずつ確認するためです。

書くときのコツは、3つだけ

大げさな装備はいりません。スマホとペン、あとは付箋があれば十分です。

  • 窓のない場所は、スマホのライトで照らす。 浴室・洗面台の下・シンク下・クローゼットの中は暗く、傷を見落としやすい場所です。空室は照明器具が付いていないこともあります
  • 傷の位置に付箋を貼ってから、写真を撮る。 傷だけを接写すると、あとで「どこの傷だったか」が分からなくなります
  • 気になったら、大きさも書いておく。 「3cmの引っかき傷」まで書けば、退去時に揉める余地がなくなります

退去のとき。その場で決めない

入居初日の話をしてきましたが、出口でも2つだけ——その場でサインしないことと、明細をもらうことです。

退去の立ち会いでは、その場で負担箇所の確認を求められます。ここで金額に同意する必要はありません。 「明細を確認してから返事します」でいい。入居時に現況確認書と写真を残していれば、あとから何を言われても、それが証拠になります。 立ち会いの場で押し切られるのが、いちばん典型的な負け方です。

請求は、合計額ではなく明細でもらってください。 項目と単価を、契約時の要項と突き合わせる。要項にない項目が乗っていたら、聞く。

それでも納得できない金額だった場合の進み方も、順番が決まっています。①明細を出してもらう → ②国交省の原状回復ガイドラインと突き合わせる → ③折り合わなければ消費生活センター(電話188)に相談する。 泣き寝入りの前に、この3段があります。

なお、うっかり付けてしまった傷は、自分の火災保険(破損・汚損の特約)で直せる場合があります。ただしどの火災保険でも直せるわけではありません賃貸の火災保険を自分で選んだ記事に、私が入った年3,500円の保険では直せなかったところまで書いています。

正直に書いておくこと

この記事の金額のうち、私が実際に払い終えたものはまだありません。 確定した金額と、実際に払った金額は、別のものだと思っているので、部屋ごとに分けて書いておきます。

【名古屋の部屋】 44,000円は、この8月末の退去で実際に精算します。特約どおりの金額で済んだのか、追加の請求があったのか——精算が終わったら、実額をこの記事に追記します。 また、この部屋では契約時に消臭抗菌施工費11,000円と24時間緊急対応を「外せませんか」と交渉して、外せませんでした。 よく「断れる項目」として紹介されるものでも、実際には拒否できないことがあります。

【品川の部屋】 66,550円は契約書で確定した金額で、退去は数年先です。そしてこの契約では、鍵交換の70,400円を削れませんでした。 任意の項目はいくつか断りましたが、ここは交渉に失敗しています。調べた範囲では相場の2〜3倍です。契約書には紛失時の価格表(シリンダー交換79,200円など)まで載っていましたが、この70,400円が何にいくらなのかは、書面からは最後まで分かりませんでした。

まとめ

  • 同じエリアで比べると、敷金なしの退去費用は高めだった(品川3件で敷金なしが最高額。ただし差は約1万円)。敷金ありでも5.5〜5.8万円は取られる
  • 金額を決めているのは契約ごとの特約。 地域や物件で水準そのものが動く——だから相場を調べるより、その物件の要項を見るほうが早い
  • 広さでも築年数でも決まらない。 だから相場を調べるより、その物件の要項を見るほうが早い
  • 敷金は預け金なので、実質の差は礼金の部分
  • 入居時の現金を抑えたくて敷金なしを選ぶのは合理的。 ただし退去時に現金で払う日が来る。次の部屋の初期費用と引越し代と、同じ月に重なる
  • ハウスクリーニング代は清掃状況にかかわらず取られる(特約がある場合)。退去前の大掃除でこの金額は減らない
  • 床の傷は経過年数で守られない。 引越し当日の床養生と、入居初日の現況確認書がいちばんの防御
  • 現況確認書がすべての基準。 書き漏らした傷は自分の負担になる。だから家具を入れる前に書く

まだ物件を決めていない方は、内見の段階で「原状回復に関する負担要項」を見せてもらってください。 契約前の説明を待つのではなく、選んでいる最中に手元に置く。比べたい物件が複数あるなら、要項の金額だけを並べた表を自分で作る——この記事の4件の表が、まさにそれです。

初期費用そのものが高く見えるという方は、43万円の内訳を全部公開した記事があります。退去クリーニング代を入居時に前払いする物件もあり、初期費用の総額だけでは比べられません。

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